フィルマゲドン記 9月12日金曜日その1

今日はいよいよ「カナザワ映画祭2008 フィルマゲドン」の初日。去年の野外上映ほど天気については心配していなかったが(他の心配ごとが多するため)晴れ。
いつも通り7時半に起きて9時に会社へ行き12時まで仕事をして映画祭のために早退する。

この間から、スタッフの杜氏のMさんに『ヤコペッティ世界残酷物語』野外上映の設営の立会いをしてもらう。学生チームには『アブグレイブの幽霊』と『消えた少女たち』の字幕制作をしてもらう一方、美術館のシアター21では『意志の勝利』、『What is it?』、『It is Fine! Everything is Fine.』の字幕合わせの練習を別チームがしていた。

着替えて12時半にクリスピンさんたちをホテルまで迎えに行き、寿司屋の「小松弥助」へ昼食を食べに行く。現地で高橋ヨシキさんとカプコンのMさんと合流。混んでいたので20分ほど待つ。
ようやく席に着き寿司を食べ始める。皆、寿司の旨さに感動する。クリスピンさんはこれは「unusual なおいしさだ」と言っていた。あと、通常おしぼりとは別の手ふき用おしぼりで顔を拭いていたので注意してあげた。
今回のカナザワ映画祭の内容が話題に上がり、映画祭テーマは「CO2削減」だと教えたら、「CO2削減?! へへッへへッへへッ」とウケていた。
それと、日曜日のオールナイトで来る予定だった日本の映画監督が作品の題材のために日本のシークレット・ポリスに逮捕されて金沢に来れなくなったと教えたら、大層驚き非常に興味を持ったようだ。
その他の話題は血統についてなど。クリスピンさんの先祖はチェコのドイツ系らしいが、DNAを調べたところアジア系の遺伝子も混じっていたという。なのでおそらくご先祖さまはモンゴル人に侵略されたときに襲われたのだろう。

昼食後はクリスピンさんたちが禅寺の大乗寺に行きたがっていたので、ヨシキさんとMさんとは分かれて(ヨシキさんたちは弥助に残ってで寿司を楽しむらしい)、3人で大乗寺へ自動車で向かった。

大乗寺ではクリスピンさんたちは猫がうろつく苔むした寺の境内を色々くまなく見て回り、鐘を突いたり、たくさん質問をしてきたりして非常に楽しんでいた。こっちに来てから一番リラックスしているように見えた。
禅寺の修行僧は朝4時に起きて掃除をしたり修行をしたりで食事の量も少なく夜の20時には寝ると、クリスピンさんとマーラさんに教えると、マーラさんが「そんなつらい人生、なにが楽しいのかしら」と答えたので、前に自分が禅寺のお和尚に同じ事を聞いたときに和尚は「いやあ、あの修行時代は幸せでしたねえ。何にも考えなくてよかったですからねえ。修行で決まったことだけやってればよかったですからねえ」と教えてくれたことを思い出し同じ事を彼女に教えると、「何にも考えなくていいのが幸せなんておかしいわよ」と言ったが、クリスピンさんは「その和尚の考えはよく分かる」と言った。和尚とクリスピンさんの言うとおりだと思う。見よ!あの『意志の勝利』の幸福そうなドイツ人たちの顔を!「ジーク・ハイル!」とみんな本当に幸せそうだった。あの映画から10年後には、作品中のあの立派な街は完全な廃墟になり、あの人たちの9割は死んだのだろう。
禅寺を満喫したので、そろそろホテルまで送ることにしたが、境内でマーラさんがかなり蚊に刺されたので途中で薬局によってかゆみ止めの薬と髪切ハサミ(クリスピンさん用)を買ってから16時過ぎにホテルへ向かった。18時半ころに野外上映あいさつのためにまた迎えに来ると約束してシアター21に向かった。

このあたりの時間帯にゲストの柳下毅一郎さん(金沢までの電車の中でスライドショウ2日目の翻訳作業をしてもらった)、田野辺尚人さんやカナザワ映画祭の常連の人たちが続々と東京から金沢入りをした。中原昌也さんもこの時間帯に金沢に着く予定だったが、遅くなって22時ごろになりそうだと連絡がきた。

その間、野外上映設営に立ち会っていた杜氏のMさんから連絡が、どうせ何かのトラブルだろうと思っていたがやはりトラブルだった。スクリーンの上下の位置がうまくいかなくてフィルムを投影できないという。「まあ良きに頼む」とだけ答えてすぐに電話を切った。