フィルマゲドン記 9月11日木曜日その2

記者会見会場には地元TV局2社と新聞社4社が来ていた。
客席に記者さんたちが座り、スクリーン前に置かれた机にクリスピンさんを真ん中にして高橋ヨシキさんと自分の3人で座る。

一つ一つの質問に対してクリスピンさんがすごく丁寧に答える。各平均20分以上。一つの答えが長すぎてヨシキさんも訳すのが非常に大変そうだが、きちんと訳してくれている。以前、スペインのシッチェス映画祭で『What is it?』を上映した際、スペイン人の通訳はQ&Aでクリスピンさんの回答のあまりの長さに呆然としてしまい全然訳せなかったそうだ。

クリスピンさんは「観客が安心して楽しめるものではなく、観た人を不安にさせ掻き乱し、観た後に考えさせるような作品を作りたかった。」と力強く言っていた。
あと、IT3部作の最終作『It is Mine』はチェコにセットを作って準備中とのこと。

記者会見は1時間を予定していたが、気付けば2時間を軽く越し17時近くになっていた。スライドショウのリハーサルや各作品の字幕合わせ(スライドショウの2日目の字幕翻訳はこの間も柳下さんが東京で作業中)もまだしていないので、「ハイもう終わり」と終了させる。TVや新聞ではクリスピンさんが答えたようなたくさんの取材内容は出せないはずなのだ。実際そんなに多くは出なかった。

記者さんたちが帰り支度をしている間に早速リハーサルの準備を進める。

その間に携帯電話の着信をチェックしてみると渡辺監督の奥さんから留守電が。
聞いてみると「監督がいつ釈放されるか分からないので、わたしがプリントを持って金沢に行きます」。すぐに電話を折り返すと映写機の操作が分からないのでそれだけ手配して欲しいとの事。『天皇伝説』と『ノモンハン』はプリントに音が入っていないので、別素材の音の操作は奥さんがするらしい。ということでフミキ・オールナイトの実現性が高まってきたのだった。

引き続きクリスピンさんのスライドショウのリハーサルに入る。
まずクリスピンさんのマックをシアター21のプロジェクターに接続しようとするが、クリスピンさんがコンセントの変換機をホテルの部屋に忘れてきたので、取ってきてもらった。

クリスピンさんが変換機を持って帰ってきたのでようやくマックをプロジェクターに接続し、スクリーンに映す。当初、スライドショウの字幕は別の小型スクリーンを設置して投影する予定だったが、そのまま従来のシアターのスクリーンに写したほうが見やすかったので急遽変更になった。これでスライドショウの字幕並べ替え作業が新たに発生。スタッフのMさんとYさんにその作業をお願いする。
とりあえず、当初の形でスライドショウの字幕合わせをしてみることになった。
最初、スライドショウの字幕オペレーターは自分だった。それで、リハーサルでクリスピンさんの台詞に合わせて操作してみるが全然合わない。いや、それよりもクリスピンさんの台詞が長くていったいどこを読んでいるのかもさっぱり分からない!そこで、英語が堪能なヨシキさんに操作を代わってもらうと良い感じで字幕と台詞があっている。しかし、ヨシキさんはもともと観客として来ているのでこれ以上仕事を頼むわけにはいかないなあと弱っていると、良いアイデアが浮かんだ。あの人がいるではないか! ということで、柳下毅一郎さんにその新たな仕事を依頼することにした。

この日はその後、舞台登場時の段取りやライティングのセッティング、フィルムの映写チェックなど21時過ぎまでリハーサル作業をした。
リハーサル終了後は「いたる 香林坊店」で食事をし、クリスピンさんとマーラさんはお疲れだったので23時前にはホテルへ帰って行った。
その後、ヨシキさんと1時過ぎまで店を代えて飲んだ。なんか激しく言い争った記憶があるが、まあ、"It is Fine! Everything is Fine." だ。